☆四季
スカートの裾を翻し校門に、駆け込んでいく学生たちに混じって、のんびりと歩く学生が一人。 決して時間を気にする風でもなく校門を潜り抜けて行く。 まだ9月、新学期は始まったばかり。 ひと夏の恋が終わり暗い顔をする生徒や、これからの恋に夢中でいる者、あるいは、そんな恋話を大げさに吹聴して喋る者もいる。 果してその中で一体どれだけの者が、本物の恋人に出会っているのだろうか? 「愛している」その言葉に真実の囁きがあったのは、数人居たであろうか? ほんの遊びと割り切るには、納得のいかないと思う者も居るだろう。 遊びと本気の2人には辛い泥沼の始まる季節でもある! 「私さぁー、実は・・・」「このまえよぅー・・・」 「うそ~!!」「本当にやっち・・・」「キャァーーー」「馬鹿ねー!遊ばれたのよ!・・」「俺は真剣に!」「思い出・・・」 とあちらこちらで、夏の事を話し合う断片的な声が聞こえて来てしまう。 はっきり言って、困った話題である・・・。 付き合いとは、是で良いのだろうか?と疑問符を、投げかけてみたくなる。
やっと叶ったこの想い・・・是を否定されたり、取り上げられたくない・・・この想い壊さないで・・・永遠でないかもしれない恋心、この瞬間はとても幸せなのだから・・・ 出来る事なら、貴方の気持ち永遠に変わらないで欲しい。 こんなに・・・狂おしいほど貴方が好きなのだから・・・ 貴方といたい・・この時の流れの中を、煌めきを見つめ?んだまま貴方と共に離さない!! 。・。・。・。・。・。
『また会えた…』すれ違い様ではあるが、『嬉しい!声まで聞けた!』 けれど、また違う恋人が傍にいる・・・『でも、諦め切れない』 奪ってしまいたい衝動に駆られてしまう・・でもそうする訳には行かない!好きな人の不幸を願うなんて誰が出来るだろうか?貴方を不幸にしたくない、相手なんか不幸になっても自分のものにしたいと言う衝動は貴方を見るたびに、泉が湧くように懇々と湧きあがり、罠でも仕掛けそうになってしまうほどである。 今は、まだ駄目なんだろうか?心を偽って今の恋人と共に過ぎ行く時の流れに身を任せるしかないのであろうか? どうしても先に進む気に成れないのは、恋人にも自分の心悟られているんではないだろうか? 少しづつ、微妙な歪が出来てきたようだ。 貴方の事を想うと、胸が締め付けられるように苦しい、如何したと言うのだろうか、恋人に申し訳ないと想いながらの裏切り・・・知られる訳には行かない! 今は貴方しか頼れない、離れてしまったら行く所が無い。 そうは想っていても、心と言う物は間々ならないもの・・・
M’s 『ああカッタルイ!遣ってられネ!』 「ひどいわ!!!」少女が叫ぶ。 『いいさ・・如何だって…関係ないんだよ、今の君では』 「ばかーー!!」そう言うなり、少女の手が彼の頬を打つ! 『気が済んだか?』彼は平然と言い放つ。 「彼方は、大嘘つきよ!ヒトデナシ!! 好きな女がいるくせに・上辺付き合ってるだけじゃない!斉藤君の馬鹿!!」と少女は、学生鞄を振り落とし、斉藤にHIT注せてしまった。 『お前に何が解るんだ?』少女を睨み付けながら、斉藤は応える。 少女は泣きながら・・制服のスカートの裾を翻しながら走り去ってゆく。 折しも季節は露シーズン真っ盛り・・・。 急にポツポツと雨が降り出してきた、その中を斉藤は雨宿りするでもなく、彼女が鞄を、HITさせてしまった頭を摩りながら、フラフラと歩き出した。
W’s 「君は、何を考えている?」心配そうに高志は尋ねる。 が、『ごめんなさい・・・それしか言えない…あなたは優しい…ただそれだけ…の事・』声を詰まらせ、震えながら応える絵梨。 絵梨の目から、涙が零れ落ちる。 そっと、絵梨に口付けをする高志だが、絵梨の涙は止まらない。 高志の胸に顔を埋め、すすり泣き続けている絵梨・・・。 優しく絵梨を抱きしめる高志、その姿は、駅前を通りすぎる 人々を完全に無視していた。 その姿を、遠目に見つめ続ける姿があった、が、二人は気が付くはづもなく、高志は絵梨を抱きかかえるようにして、タクシーに乗り込んで行った。駅の柱の陰から見つめるだけの斉藤は、タダタダその場に立ち尽くしていた。
無表情のまま、絵梨はタクシーの車窓から、ぼんやりと夜景を眺めていた。 高志はそんな絵梨の腰に腕を廻し、自分の方に確りと抱き寄せたままマンジリともせずに絵梨を見つめていた。
『海に・・』絵梨がつぶやく。 高志は、運転手に行き先を変更させる。 海岸でタクシーを降りると、2人は砂浜を歩き始めた。 絵梨はまた涙を頬に伝わし、高志を見つめ言葉を紡いだ。 「高志さん、あなたが好きです!でも、私には、心に占める方がいます。 でもその方と、恋愛をすることは出来ません。 どんなに愛しくても・・・です。そして貴方にも私は・・・。」 「まって!」高志は言い留まらせる。 「いいえ!駄目なんです・・・隠し事をしたまま貴方と付き合っては行けません!好きだから尚更。」
「許さない!!君は僕のものだ…放すものか!何を考えている?」 「許して…貴方が好きです!けれど私は・・・私の心は貴方から離れようとしているのです…」 「駄目だ!そんな事させやしない!私のプロポーズを君は受けて、11月には結婚するはずだろう?」 「考えても見たまえ?!」 「いや!!」 「そんな我儘がもうこの先通るとでも思っているのかい?……子供じゃないのだからもう少し大人になって考えて見なさい」 「ひどい!!ずっと考えてきたのよ!!」 「僕の事を考えているとでも言うのかい?・・・うそだね!君は君の事だけしか考えていない!」 「いいえ」 「そうなんだよ!何を如何・・言ったって・・周りのことすら目に入ってはいないだろう?」 「あっ・・・・」 「でも、あの事件から・・・私の心に入り込んできたあの人を、どうして追い出せる?出来なくて・・・忘れようとすればするほど・・・苦しくなってどうしようもない焦燥感に襲われるのに・・・」 「それでもだ!僕のほうだけを見ているんだ!」 「出来ない」「やるんだ!どれだけ思っていたって、そんな事叶うわけもないし出来るはずも無いだろう?」どんどん命令口調になる高志、相反するように弱弱しくしか応えられなくなっていく絵梨。 翌朝、斉藤は駅の改札にいた…何時現れるとも知れぬ絵梨を待って。 その日絵梨は駅に現れなかった。 高志に連れられて、絵梨の実家へと連れられていた。 当然2人とも仕事は休んでいた。 絵梨の両親に、結婚の同意を得た高志は絵梨の部屋に二人っきりで、絵梨の指に婚約の証を収めようとしていた。 だが、そんな事させる気のない絵梨は抵抗していた・・・。 「絵梨教えただろう?君が望もうと望むまいと・・・思い通りになる事なんかないってことが如何して判らないんだ?」 「高志さん・・・いや・・・出来ない!!結婚なんてどうしても・・・」 「貴方も私も不幸になってしまう。」 「馬鹿な!!・・・私には、君が手に入らないことのほうが不幸だ!!」 「そう・・・私も・・・心惹かれる方がいる!その方とともに歩けないのであれば・・・もっと不幸になってしまう。」 「やめなさい」 「貴方とは、相容れるものが無い・・・たとえ・・・相惹かれても叶う事が無くったって・・いい・・傷ついたって・・・」 「後悔なんかしたくない!!」絵梨は最後にいいきった。 高志は絵梨の激しい感情にたじろいでしまい・・・一瞬言葉に詰まった。「君が見えない・・・絵梨・・・」 「高志さん・・ごめんなさい・・・もう貴方と・・・やっていけない・・・この指輪受け取れない・・・」そう言うと部屋を出て、フラリと外に出た。トボトボと、駅に向かい絵梨は早足で歩いていた。 この先に待っているのは?幸か不幸か?・・・・・・だが確実にその時は迫ってくる!!!この道は果てしなく絡み始めて・・・思わぬ方へと動き出してしまっていた。
高志は只呆然としていた・・・。 その後絵梨を探しに出たものの・・・どこへ言ったかも分からず手を拱いているだけだった。 絵梨の行こうとする駅には、斉藤がまだ、絵梨の事を待ち続けていた。 もう帰ろう・・・ココを離れなければと思えば思うほどに、何だか離れてしまってはいけないような気になって・・・何時までもこうしてダラダラと居たけれど、そろそろココも離れなければ・・・そう思ったときだった。 タイミングよく絵梨はやってきた・・・斉藤の前に・・・ 絵梨と斉藤が再び出会ってしまった。
「こんにちは」 「あ・・・斉藤君?」 「ずっと待っていたんです、貴女を」 「さ・・・」そう言ったまま涙を零してしまう絵梨。 「貴女を、ずっと待っていた・・・どうしても会いたかった!!」 「あな・・た・・どうして?」 「絵梨さんを忘れる事が出来なかった!!」 「彼女は・・・?」 「別れました」 「なっ・・・」 「貴女が好きです!!絵梨さん」 「斉藤君・・・」涙を浮かべたまま、絵梨は斉藤を見つめる。 そんなえりを、斉藤はだきしめて、『貴女が好きだ!!』叫んだ!! 絵梨は呆然として只頷くだけだった。 その後二人は、絵梨のマンションの部屋に居た。
「愛しています・・・絵梨さん」 「斉藤君・・・」 「斉藤じゃなく・・・名前で呼んで・・・樹・・・だよ!い・つ・き」 「樹」 絵梨の言葉を聴くとたまりかねたように、斉藤は絵梨の唇に顔を近づけていった。 啄ばむキスから、だんだん息も出来ぬ程の激しいキスへと変わっていく。 絵梨の身体は、どんどん熱くなっていく、斉藤の舌が生き物のように絵梨を攻め落としていく。 「あぅ・・・」「ハァ・・っ・・・ま・・って・・あっ・・・」 「いやだ!!まてない!・・・あの時から・・忘れられなかった・・・」 「樹・・・私も、会いたかった・・・忘れられなかった!!」 「これから僕と付き合って!」 「でも貴方には・・・彼女が・・」 「とっくに別れました・・・あなたと付き合うために」 「まさか?そんな・・・」 「いいんです!貴女を忘れる為に付きあっていたんですから」 「嬉しい!」 「貴女をを抱きたい」 「樹・・・私でいい?」 「もちろん!!愛している」そう言うと絵梨をきつく抱きしめる。 「・・い・・つ・・あっ・・・」更に激しい口付けをする二人のシルエットは重なり合い、遂に肌を触れ合わせていく・・・。 「ああ・・・絵梨・・・貴女の肌だ・・・あの日から待ち焦がれた」そう言いながら・・・斉藤の手が絵梨の身体をなでる・・・。 唇は、絵梨の胸にあてがい、赤い薔薇の花びらを散らせていった。 徐々に、斉藤の唇は絵梨の身体を這い降りていく。 絵梨の身体は益々熱くなり、喘ぎ身体も仰け反らせながら、斉藤の愛撫に応えている。 ベッドのシーツも乱れ・・その時を待つかのごとく絵梨の肢体が揺れる。 斉藤は頃合を見計らって、絵梨の中へと自身を進めていく・・・「樹・・・」「絵梨・・・愛している」 「いつき・・・ああ!!」絵梨の目から涙がこぼれる・・・。 斉藤の動きが激しくなり・・絵梨と斉藤は共に頂点へと昇り詰めていった。
しかし、二人は知らない・・・絵梨のマンションの下から、絵梨の部屋の窓を見上げる人影があったことを!!
夏編END
-to be continued NEXTページ-
ヤット終わったな・・・(ふう)
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